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東京地方裁判所 昭和52年(特わ)2149号 判決

被告人

(一)本店所在地

東京都江東区大島一丁目八番二三号

岡バルブ製造株式会社

(右代表者代表取締役 岡安和雄)

(二)本籍

千葉県野田市野田二九〇番地の三

住居

東京都江東区大島一丁目八番二三号

職業

会社役員

岡安和雄

大正一四年四月二〇日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官五十嵐紀男出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告会社岡バルブ製造株式会社を罰金一二〇〇万円に、被告人岡安和雄を懲役一〇月にそれぞれ処する。

被告入岡安和雄に対し、この裁判確定の日から二年間の、右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社岡バルブ製造株式会社は、東京都江東区大島一丁目八番二三号に本店を置き、鍛造バルブの製造、販売を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人岡安和雄は、同会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人岡安は、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、架空仕入の計上等の方法により所得を秘匿したうえ、昭和四九年二月一日から同五〇年一月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億五〇二七万五〇二六円(別紙(一)修正損益計算書参照)あつたにもかかわらず、同五〇年三月二七日、同都江東区亀戸二丁目一七番八号所在の所轄江東税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二四五四万〇九四八円でこれに対する法人税額が七四七万七八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額五七四八万五一〇〇円(税額の算定は別紙(二)税額計算書参照)と右申告税額との差額五〇〇〇万七三〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)(甲・乙は検察官の証拠請求の符号)

判示冒頭の事実及び全般にわたり

一、被告人の当公判廷における供述

一、同じく収税官史に対する各質問てん末書(九通)

一、同じく検察官に対する供述調書

一、東京法務局登記官作成の被告会社登記簿謄本

一、証人菊地亮弘の当公判廷における供述

一、被告会社代表取締役岡安和雄作成の上申書(弁三~六)

判示事実添付の別紙修正損益計算書に掲げる各勘定科目別当期増減金額欄記載の数額につき

<製造仕入製品売上高につき>

一、収税官史中村健二郎作成の昭和五二年三月七日付製造仕入製品売上高調査書(甲2)

一、真壁真由美の収税官吏に対する質問てん末書(甲3)

一、真壁真由美の検察官に対する供述調書(甲4)

<期首材料棚卸高につき>

一、菊地亮弘作成の被告会社上申書(甲7)

一、被告人の収税官史に対する昭和五二年二月二三日付質問てん末書(乙4)

一、収税官史山口久男の検査てん末書(甲8)

<製品仕入高につき>

一、収税官史中村健二郎作成の昭和五二年三月四日付架空製品仕入高調査書(甲9)

一、滝禧雄の収税官史に対する質問てん末書(甲10)

一、神山義信の収税官史に対する質問てん末書(甲11)

<材料仕入高につき>

一、収税官史中村健二郎作成の昭和五二年三月四日付架空材料仕入高調査書(甲12)

一、小川誠二の収税官吏に対する質問てん末書(甲13)

<外注加工費につき>

一、収税官史中村健二郎作成の昭和五二年三月四日付架空外注加工費調査書(甲14)

一、山下友喜の収税官史に対する昭和五二年二月二四日付質問てん末書(但し、問五及び答の記載部分を除く)(甲15)

一、六波羅元幸の収税官史に対する質問てん末書(甲16)

<(機械)減価償却費につき>

一、収税官史中村健二郎作成の昭和五二年三月七日付(機械)減価償却費調査書(甲17)

一、小林武夫の収税官吏に対する質問てん末書(甲18)

一、近藤信行の収税官吏に対する質問てん末書(甲19)

一、大蔵事務官森角袈裟男作成の証明書(甲20)

<期末材料棚卸高、期末補助材料棚卸高、期末仕掛品棚卸高、期末製品棚卸高、期末スクラツプ棚卸高につき>

一、収税官吏中村健二郎作成の昭和五二年三月一二日付期末製品、仕掛品、材料、補助材料及び棚卸高調査書(甲21)

一、菊地亮弘他二名作成の被告会社昭和五二年三月九日付上申書(甲22)

<給料、損金算入役員賞与、保険料につき>

一、被告人の収税官吏に対する昭和五二年三月一日付質問てん末書(乙8)

<保険料につき>

一、収税官吏山口久男作成の昭和五二年二月二三日付保険料中否認額調査書(甲23)

一、同じく昭和五二年二月二二日付調査報告書(甲24)

<接待交際費、組合費、雑費につき>

一、収税官吏山口久男作成の昭和五二年二月二二日付組合費中交際費及び雑費中交際費調査書(甲25)

一、収税官吏中村健二郎作成の昭和五二年三月一二日付雑費調査書(甲27)

<手数料につき>

一、滝禧雄の収税官吏に対する質問てん末書(甲10)

一、神山義信の収税官吏に対する質問てん末書(甲11)

一、小川誠二の収税官吏に対する質問てん末書(甲13)

一、山下友喜の収税官吏に対する質問てん末書(甲15)

一、収税官吏中村健二郎作成の昭和五二年三月一二日付支払手数料調査書(甲26)

<受取利息につき>

一、収税官吏湯上光昭作成の昭和五二年三月七日付預金残高等調査書(甲28)

一、収税官吏中村健二郎作成の昭和五二年三月四日付仮払源泉税調査書(甲29)

<価格変動準備金繰入額につき>

一、大蔵事務官森角袈裟男作成の証明書(甲20)

<交際費損金不算入額につき>

一、収税官吏山口久男作成の昭和五二年二月二三日付交際費の損金不算入額調査書(甲30)

<繰越欠損金の当期控除額につき>

一、収税官吏中村健二郎作成の昭和五二年三月一四日付繰越欠損金の当期控除額(犯則)調査書(甲31)

一、同じく同日付繰越欠損金の当期控除額(その他)調査書(甲32)

別紙(一)修正損益計算書に掲げた公表金額及び過少申告の事実について

一、押収してある被告会社の昭和五〇年一月期分確定申告書一袋(当庁昭和五二年押第二二二〇号符二号)

(簿外期首材料棚卸高についての当裁判所の判断)

一、弁護人は、被告会社の簿外期首材料棚卸高につきこれを争い、〔一〕検察官の主張する金額一九九五万六二九一円((1)昭和四九年六月以降日本揮発油株式会社(以下日揮という)に納入した分及びその残り分一六八三万一三六〇円、(2)大同特殊鋼代理店(野村鋼材店)預け分一〇五万四九三一円、(3)岡安房子居宅保管のニツケル二〇七万円の合計)のうち(2)、(3)については争わないが、(1)日揮納入分については検察官の主張額より多額であり、一九三五万六四八〇円を加えた三六一八万七八四〇円である。この他に、〔二〕期末棚卸において認定されたもののうち、当期に仕入をしていないもの四六九万七四八六円、〔三〕日揮以外の売上製品の原材料で期首に計上もれのもの二五〇〇万円の合計四九〇五万三九六六円が簿外期首材料棚卸高である旨主張するので、この点につき当裁判所の判断を示すこととする。

二、〔一〕 日揮に納入した分及びその残り分について

弁護人は、被告人が査察調査をうけた際において、期首棚卸計上もれの一部を算定するに当り、日揮の売上より逆算して計算した。即ち、日揮に対する売上製品の原材料は、当期購入分の他、一部、昭和四一年~四三年頃の仕入の残部で期首棚卸の計上もれであつた。これにつき被告人は、日揮に対する売上帳から日付順に整理し、日付、シンボルナムバー、サイズ、数量、材質、重さ、単価、価額を記載し、用紙にして七枚(1)昭和四九年二月二八日~六月六日(2)六月六日~八月六日(3)八月六日~九月九日(4)九月二一日~一一月一五日(5)一一月一五日~一二月一〇日(6)一二月一四日~一二月二三日(7)昭和五十年一月二三日の計七枚の計算書を作成し、期首棚卸計上もれ合計三六一八万七八四〇円として査察官に提出した。しかるに、査察官からは何等合理的根拠を示すことなく、一五〇〇万円程度におさえるようにと指示され、上記のうち、(2)、(5)のみ合計一六八三万一三六〇円だけを採用した。従つて、上記の差額一九三五万六四八〇円は期首棚卸の計上もれであると主張する。

これに対し、検察官の提出した被告会社資材担当菊地亮弘作成の「期末たな卸高について」と題する上申書(甲39)によれば、検察官の主張にそう金額一六八三万一三六〇円を一応認めることはできる。

ところで、証人菊地亮弘は、右書面については、日揮に対する売上帳から期首計上もれの材料を拾い出した七枚のうちの二枚であるとして、同時期に作成した残りの「五枚の計算書」とともに七枚を作成して社長に渡した旨証言している(証人菊地亮弘の当公判廷における供述(第三回公判期日におけるもの))。

これにつき被告人岡安和雄は、当公判廷において七枚計算書を作つてそのうち二枚しか国税局係官に提出しなかつたのは、同局の係官から一五〇〇万円程度の棚卸を出せといわれたので、そのうち、ほぼその金額に見合う二枚だけを提出した旨供述している。

しかして、被告人は、収税官吏に対し、簿外期首棚卸高については一〇〇〇万円以上二〇〇〇万円以下であつたと思う旨供述している(被告人の収税官吏に対する昭和五二年三月九日付質問てん末書問八)。

そこで、右菊地亮弘の証言中に用いられた「五枚の計算書」を、前掲上申書(甲39)と対比して、その元となる日揮に対する売上帳(甲41)に照らして検討すれば、各売上日付をみると、六月分、七月分及び一二月分が殆んど欠落している事実が認められる。そして右に該当する日付部分が、前掲「上申書(甲39)」であることは、連続性の窺われる日付のみならず、同一筆蹟、様式等からも認めることができる。

これに対し、収税官吏中村健二郎作成の昭和五三年二月二〇日付上申書(甲47)によれば、右査察官は、被告人から上申書(甲39)添付の計算書二枚のみの提出を受けただけである旨申し立てている。

これら各証拠を併せ考えれば、被告会社において、証人菊地亮弘が、同時期に弁護人の主張にそう七枚の計算書を一括して作成したうえ被告人に手交したこと、国税局係官は被告人の前掲供述に基づいて、その平均である一五〇〇万円程度と認めて、それに見合う棚卸高の計算書の提出を求めたこと、そのため、被告人において、そのうちの二枚の棚卸高計算書を係官に提出したことが認められ、証人菊地亮弘の証言中に用いた前掲「五枚の計算書」によれば、その合計額が弁護人の主張する金額一九三五万六四八〇円にそうかの如き記載のあることも一応認めることはできる。

しかしながら、証人菊地亮弘は「五枚の計算書」について、これらの在庫はもともと古いものだから落してしまつたものであつたと供述しており(証人菊地亮弘の当公判廷における証言)、被告人も、収税官吏に対し「公表に計上していなかつた材料のたな卸が昭和四六年一月末日で相当ありました」「四六年一月末で持つていた簿外材料は昭和四九年六月から一二月にかけて殆んど使用して、一部の残り材料が先の上申書にスクラツプとして記載されております」と供述している(被告人の収税官史に対する昭和五二年三月九日付質問てん末書問五、問六、問九)。

また被告人は、収税官吏に対し、在庫のうち材料とすべきものと、スクラツプとするものがあり、スクラツプというのは、材料としての価値はあるが製品化されるのが、いつになるのかわからないのでスクラツプとして評価し、右スクラツプ扱いしたものは公表在庫に計上していないものがあると供述し(被告人の収税官吏に対する昭和五二年一月二五日付質問てん末書問一二)、検察官に対しても、使い残しの材料はスクラツプとして売却せずに保管している(被告人の検察官に対する昭和五二年八月一日付供述調書)旨供述している。

しかして、被告人は、昭和五三年二月六日第四回公判期日において、これ迄の陳述を変更し、公訴事実の金額をすべて認める旨陳述し、第五回公判期日における被告人質問においては、期首棚卸高の数額を確定してもらうことは必要ではなく、期首に、それ以前からの古い品物があつたことを情状として認定して貰いたい旨供述している。

しかして、右第五回公判期日において、被告人は期首にあつた品物はいずれもそれ以前の、長年にわたる顧客からの注文残りの半端物かまたは途中における使用変更(用途変更)により生じた注文流れの品であり、これらの物は、今後いつ売れるかわからないので帳簿上から落したものであり、それは決して毎期脱税するという意図で落したものではなかつた旨供述している。

そこで右各証拠ならびに弁三ないし六の各上申書添付の写真等を併せ考えれば、期首に簿外の品物の存在することは窺われるが、それらは被告会社において、本件事業年度以前に、顧客から注文を受けて製造した残りの半端物とか、用途変更のため注文流れとなつて使い途のなくなつた品で、今後いつ同じ型の注文があるかわからず、通常の製造販売の方法では販売できないものと認めて、棚卸資産についてスクラツプとして評価換をし評価損を計上したものと認めることができる。

しかして、かかる棚卸資産の評価損の計上による損金算入については、残存価額を計上しておくことによつて税法上も許容されるものと認める(法人税法三三条二項、同法施行令六八条一号ニ)。

そうすると、被告人においても「物を大切にする習性がついていることから通常は破棄されるべきわずかな残材でも保管するよう心掛けてきた」(弁五上申書序文)と自認するように、税法上、棚卸資産の評価損を計上して既往の事業年度において会計処理されていた残存物(スクラツプ)が本件事業年度の期首に保存されていたものであつて、それがたまたま、本件事業年度に、その用途、形、素材等の合致したところの日揮からの大量注文を受けたので、この残存物を加工製造し納入販売したものであつたことを認めることができる。

従つて、たとえ顧客からの注文があつたからとしても、それが既に税法上、既往の事業年度に評価損として会計処理をした以上は、その後において、残存価額(スクラツプ)の値段を超えて仕入原価を構成するものとして会計上の処理をすることは許されないといわなければならない。

そうすると、本件事業年度の期首に弁護人主張のような「五枚の計算書」にそう現物が実在していたとしても、それは税法上は評価損として取扱われた後のものであるから、残存価額(スクラツプ)を超えた金額は製造原価を構成しないので、右についての弁護人の主張は採用できない。

従つて、右の関係にあるからこそ、本件事業年度において、売上利率が、それ迄の事業年度では約二〇%に上昇したとしても(弁護人の冒頭陳述要旨別表「損益及び製造原価分析」)、それは評価損として処理した品を再利用したためであるから、何等異とするにあらず、かえつて特段の事由の存在として認めることができる。

ところで右のとおり「五枚の計算書」に基づく期首棚卸高の計算は認められないとすると、右書面と同様の経緯によつて作成された検察官提出の上申書添付の計算書二枚(甲39)も、また右と同様に評価損として処理した品物であるから、従つて、これを逋脱所得算定のための期首棚卸高の根拠として認めることはできないといわねばならない。

しかして、期首在庫の算定にあたつては、それが前年度の期末棚卸高がそのまま繰越される関係にあるのであるから、前年において、一旦評価損として損金に算入したものを翌期首において再び元の価額に戻すことは税法上許されない。

そこで日揮に対する売上の原価とされる中には、右のような評価損として損金算入し、処理された品である残存価額(スクラツプ)分があることは窺われるが、それは本件の全立証によるも数額上確定しえないが、しかし、検察官は、本件において査察調査当時の被告人の申立てに基づき一六八三万一三六〇円の期首棚卸高を計上しているのであるから、それによつて残存価額(スクラツプ)を推認できるので、右金額を超えた残存価額(スクラツプ)の合計額があつたとする事実を認めることができない以上は、検察官において訴因変更をしない限り、右と同額を被告人の利益に計算することになるので、この点についても何ら不都合は生じないといわねばならない。

なお、検察官提出の被告会社上申書添付の計算書(甲39)には、期首のスクラツプとして八万四〇〇〇円が計上されていることが認められる。

〔二〕 期末棚卸において認定されたもののうち、当期に仕入をしていないもの四六九万七四八六円について

弁護人の右主張にそうものとして証人菊地亮弘の当公判廷における証言に用いた「二枚の計算書」によれば、一応弁護人の主張にそうかの如き金額は窺われるが、しかし、同証人の証言及び被告人の当公判廷における供述によれば、右計算書は証人が当公判廷に証人として出廷する一〇日程前に急きよ作成されたものであること、同書面を作成するにあたつては、菊地証人において期末在庫の全部を確認して作成したものではなく、単に同人の記憶に基づいて作成されたに過ぎないものであつたことが認められる。そうすると、毎期末の棚卸在高を示す帳簿書類の備付けのない被告会社につき、明瞭性、正確性を本質とする会計処理の基準に比し、右の程度を以て、直ちに期首に弁護人主張の如き棚卸高があつたものと認めることはとうていできないといわねばならず、従つて、この点についての弁護人の主張も採用しない。

なお、被告人の収税官史に対する昭和五二年三月九日付質問てん末書問六によれば、簿外材料は昭和四九年六月から一二月にかけて殆んど使用しており、一部残りがスクラツプとしてある程度であつたと供述しており、期末棚卸高については、最終仕入原価法によつて作成された被告会社作成の上申書添付の期末棚卸表(甲22)によれば、スクラツプ分として八万四〇〇〇円が計上されていることが認められる。

〔三〕 日揮以外の売上製品の原材料で期首に計上もれのもの二五〇〇万円について

右の点については、被告人の当公判廷における供述及び証人菊地亮弘の当公判廷における証言によれば、単に、日揮に対する売上以外でも期首に計上もれがあつたと抽象的に供述しているにとどまり、その他全立証によつてもその事実は認められないのみならず、仮に原材料中に期首計上もれがあつたとしても、それは既に述べた〔一〕日揮に対する分と同様であるので、弁護人の主張は失当である。

三、ところで叙上認定のように、検察官提出の上申書添付の計算書(甲39)を採用しないとすると、検察官の主張する期首材料棚卸高のうち、日揮関係分一六八三万一三六〇円については、これを認めるに足る証拠はないことになる。

前掲被告人の収税官吏に対する供述調書によれば、簿外在庫が一五〇〇万円~二〇〇〇万円あつた旨の供述は、叙上認定の事実に照らし、単に残存物(スクラツプ)が存在していたというにとどまり、その価額の評価については、当裁判所はこれを信用しない。

そうすると、本件事業年度分につき、右一六八三万一三六〇円と同額の金額が本件逋脱所得額から控除されないことになるので、その結果、実際所得金額も、右と同額が増加することとなり、逋脱法人税額の異動を生ずることになる。

しかしながら、検察官は、予備的にも訴因の変更を求めない旨申し立てているので(第五回公判期日における検察官の意見)、訴因の拘束を受けるところから、逋脱所得の算出上、右と同額を「調整勘定」として別紙修正損益計算書の借方欄当期増減金額欄に計上することとした。

その結果、公訴事実たる実際所得金額一億五〇二七万五〇二六円、逋脱法人税額五〇〇〇万七三〇〇円のとおり認定することとした。(最高裁判所昭和四〇年一二月二四日第三小法廷決定刑集第一九巻第九号八二七頁参照)

(法令の適用)

被告会社につき

法人税法一五九条、一六四条一項。

被告人につき

法人税法一五九条(懲役刑選択)。刑法二五条一項。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 松沢智)

別紙(一) 修正損益計算書

岡バルブ製造株式会社

自昭和49年2月1日

至昭和50年1月31日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

〔備考〕 調整勘定については「理由」参照

別紙(二)

税額計算書

岡バルブ製造株式会社

昭和49年2月1日

昭和50年1月31日事業年度分

〈省略〉

〈省略〉

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